【中古住宅にワークスペースの導入を】テレワークを快適にするための簡単リノベーションアイデア
中古住宅では、今のニーズと異なる物件も多数あるため、間取り変更を検討している方もいらっしゃるでしょう。その際、ワークスペースの導入についても是非考えてみてください。
新型コロナウイルス感染症（COVID-19）拡大防止をきっかけに、5類移行後も引き続き多くの方がテレワーク（在宅勤務）で働いています。 2023年12月の時点で都内企業のテレワーク実施率は41.4%だったものの、企業の生産性向上などに寄与するとしてテレワークの導入を支援する流れにあります。[注1]
中には在宅での作業環境が整っていない中でも、テレワーク制度を導入した企業も少なくないようです。結果として、一定数の在宅勤務者がストレスを感じながらテレワークをしている現状があるようです。 もともとテレワークは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、産学官連携で導入が推進されてきました。 新型コロナウイルス感染症が落ち着いてきた後も、企業側は働き方改革の一環としてテレワーク制度の採用・継続は増加していくと考えられています。 テレワーク（在宅勤務）でも会社と同じように、快適な環境で働くことができるようにしたいものです。
テレワーク（在宅勤務）でみんなを困らせる3項目
テレワークには、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができるというメリットがあります。一方で、自宅勤務だからこそ不便だと感じる在宅ワーカーも少なくないようです。
＊仕事中、家族の声や足音などの生活音が聞こえて気になる ＊仕事に関係のないものが視界に入ってくるので気が散る ＊デスクやチェアが作業に適していないので余計に疲れる
テレワークで在宅ワーカーが困っていることとしてよく挙げられるのが、上記3項目です。
普段働いているオフィスの環境は、仕事に集中できるように整えられていますが、在宅ワークの環境が整っているとは限りません。
小さい子どもがいたり、ペットを飼っていたりする家庭では、仕事中に声や足音などの生活音が聞こえてきてどうしても気になってしまいます。仕事とは関係ないものが目に入ることもあれば、仕事の合間に家事や育児に追われることもあるかもしれません。これが、集中力が続かない原因となってしまうのです。
せっかく自宅で働けるにも関わらず、想像以上にストレスを感じてしまう人も少なくありません。日経新聞社のアンケート調査では、テレワークへ移行した後、ストレスが「上がった」「やや上がった」と回答した人が40.0%で、「下がった」「やや下がった」の30.7％を上回るという結果が出ています。[注2]
テレワーク中の生産性の低下を感じて悩む人もいます。同じ調査では、テレワークで生産性が「下がった」「やや下がった」と回答した人は42.4％で、「上がった」「やや上がった」の27.3％を上回っています。[注2]
その一因は、机や椅子の問題です。オフィス用のデスク・チェアとは違い、日常生活で使う机や椅子は作業に適したつくりにはなってるとは限りません。こうした机や椅子で長時間作業をすると、疲労の蓄積が大きくなったり集中力が低下したりと、業務効率の大きな低下を招きます。
「仕事専用のワークスペース」の確保こそが、快適なテレワーク（在宅勤務）への近道！
快適にテレワークをするためには「仕事専用のワークスペース」が必要です。テレワークでストレスの増加や生産性の低下を引き起こす原因は、仕事をするうえで自宅での作業環境が整っていないという点にあります。
たとえば、リビングにあるローテーブルやソファ、ダイニングテーブルや椅子は、長時間の作業に適しているとは言えません。快適なテレワークのためには、仕事専用のワークスペースが必須なのです。
ワークスペースといっても、オフィスにあるような専用の個室が必要になるわけではありません。作業に適しているデスクや椅子、業務に集中できる空間づくりで、簡単に自宅ワークスペースを手に入れることができます。
自宅にワークスペースを作るための３つの簡単リノベーションアイデア
1. リビングやダイニングの端にデスクを設置する
リビングやダイニングでテレワークをする場合は、ワークスペースはできるだけ部屋の端に確保しましょう。そして、デスクは窓や壁側に向けて配置しましょう。視界を制限して、仕事に集中できるようにします。
とくに、小さい子どもや、ペットを飼っている家庭では、よく目が届くのでリビングやダイニングでの作業が安心でしょう。新しく部屋を準備する必要がなく、時間もコストもかかりません。
どうしても周囲の雑音や人の声などが気になったり、Web会議や電話対応の頻度が高い場合は、作業空間に仕切りや隔たりが必要になるかもしれません。そうした場合、観葉植物やパーテーションの設置を検討してみましょう。コストをかけなくてもブースのような作業空間がつくれますし、音や視界に入る不必要な情報を遮断できます。
小さな子どものいる家庭の場合は、ガラス製のパーテーションがいいでしょう。子どもの様子を見れますし、作業に集中するための個室空間の確保もできます。
2. ワークスペースを寝室に設置する
寝室にワークスペースをつくるのも効果的な方法です。テレワーク用の部屋をわざわざ用意しなくても、基本的にベッドルームは就寝時しか使用しません。日中に仕事をする場合、静かなので集中して作業ができます。棚付きのヘッドボードがあるタイプのベッドなら本やスピーカーを置けて、快適な作業空間になります。寝室の広さが6畳以上あるという家庭におすすめです。
しかし、生活用と仕事用のスペースを分けてメリハリのある空間にしたいと感じる方もいるかもしれません。その場合、デスクと椅子を設置する場所をベッドから離し、仕事とプライベートの空間を上手に切り分けましょう。
なお、Web会議システムを使う場合、寝具やベッドが映らないように注意する必要があります。デスクを設置する位置は、きちんとプライバシーを確保できる場所にしてください。
3. 納戸や空いているスペースの活用を考える
家の中に隠れているデッドスペースを、テレワークに活用しましょう。
＊使用頻度の少ない納屋 ＊納戸 ＊部屋と部屋の間にあるデッドスペース
上記は、簡単なリノベーションをすれば使い勝手のよいワークスペースへ変えることができます。とくに、戸建てに多い納屋や納戸であれば、もとから照明やライトがついているため、大掛かりなリノベーションや電気工事は不要です。デスクの代わりに広い板を壁に架け渡したり、棚をデスクとして再利用したりと、少しの工夫で簡単に個室や半個室の作業空間を確保できます。
中古マンションは利用できる空間が限られているので、部屋と部屋の間にある隙間や、デッドスペースを見つけて有効活用していきましょう。ワークスペースにするためには、幅75～85㎝、奥行き50cm以上のパソコンテーブルが置けるだけの広さがあれば十分です。
仕事道具などの必要なものがすべて手の届く範囲に置けるため、むしろ効率的に作業ができるかもしれません。デッドスペースが廊下に面している場合では、物音や話し声を遮断できるように、入り口付近に観葉植物やパーテーションを置いたり、簡単な扉を取り付けたりしましょう。
自宅ワークスペースを快適にするために、リノベーション時は要注意！
快適なテレワークのため、リノベーションで失敗しないよう事前準備はしっかり行いましょう。そこで、ワークスペースを快適にするためのコツ3点を解説します。快適なワークスペースを作るうえで、一番重要なのがデスクと椅子の選定です。とくに椅子については、厚生労働省の「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」で、5つの要件が定められています。
1. 身長に合った高さのデスクと、長時間座っても疲れない椅子を選ぼう
背もたれや肘掛けがない椅子は、自宅作業には不向きです。椅子は肘掛けがあり、座面の高さや背もたれの傾きを自由に調整できるもの、長い時間座っていても疲れにくいものを選びましょう。デスクを選ぶ時は、自分の身長に合った高さのものを選ぶようにしてください。厚生労働省のガイドラインでも、「床からの高さは作業者の体形にあった高さ」である机や作業台であることが望ましいとされています。[注3]
納屋や納戸をリノベーションし、デスク代わりに壁に板を渡す場合は、高さを調節できるようにしておきましょう。椅子やデスクが体に合わないと、足腰に大きな負荷がかかり、腰痛や肩こりの原因となります。作業が長時間になればなるほど体への負担も増えていくので、調節できる必要性があるのです。リノベーションをする時には必ずこうした要望を出してください。
2. 照明・温度・湿度の調整ができるようにしておこう
厚生労働省からテレワークに関する通達で、「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」だけでなく、「事務所衛生基準規則」も基準として出されています。仕事中の照明・温度・湿度の衛生基準は、事務所衛生基準規則で定められています。
基本的にワークスペースの照明の色は「昼白色」です。机の上の明るさは、最低でも300ルクス（lx）以上になるように調整してください。300ルクスとは、一般的なオフィスの受付・化粧室や、学校の教室と同じレベルの基準になります。
仕事にメリハリをつけるために、小休憩の時は照明の色や明るさを変えることもおすすめです。リノベーションで新しく照明を取り付ける場合は、ぜひ色や明るさを調節できるものを選んでみてください。
また、ワークスペースの室温は17～28℃を維持し、相対湿度は40～70%に収まるようにしましょう。[注4] 納屋・納戸やデッドスペースには、空調設備がない場合も考えられます。リノベーションをする際は、優先して設置すべきとても重要なポイントになります。ワークスペースは空調の気流が直接当たらないように気を付けましょう。
3.パソコンなどの配線はスッキリと整理しよう
意外と見落としてしまうのが、パソコンなどの配線の問題です。パソコンの電源ケーブルや、ルーターにつなぐLANケーブルがごちゃごちゃになっていると、見た目も悪く作業に集中できない原因にもなります。
ケーブルがタコ足配線になってしまうのは、コンセントと情報機器の位置関係が良くないことが原因です。情報機器からコンセントやルーターの差し込み口の位置が離れていると、延長コードを多く必要としたり、部屋の真ん中をケーブルが通ったりと、配線周りがスッキリしません。ケーブルに足を引っ掛かけて転倒する危険や、火災の出火原因につながるといったリスクもあります。
コンセントの増設や取り付けには電気配線工事が必要なので、大規模なリノベーションになることもありますが、配線の整理は快適なワークスペースのために欠かせません。
リノベーションで自宅にワークスペースを作り、より快適なテレワークを！
テレワークを快適なものにするためには、専用のワークスペースが必要になります。テレワーク中の余計なストレスをなくし、長時間の仕事でも集中できるような環境を整えられます。ワークスペースを作ることは、自己投資をするということ。作業環境をしっかり整えて、テレワーク中の生産性を上げましょう。おのずと自己の成長や会社からの評価アップにつながっていくことでしょう。
記事内でご紹介したリノベーションアイデアは、基本的に時間や費用もかかりません。大掛かりな工事も必要としません。
「今すぐのリノベーションは難しくてできない！」という方でも、仕切りやパーテーションを購入することで、簡単にブースのようなワークスペースを作ることはできます。新型コロナウイルス感染症の流行がきっかけになり、テレワーク制度を推進する企業は増加しています。
中古住宅でもリノベーションでワークスペースを導入し、快適にテレワークができるように環境を整えていきましょう。
テレワークのリノベーションに関してよく聞かれる３つの質問
Q，簡単にワークスペースを作りたいです。どうしたらいいですか。
A，リビングや寝室の端にデスクを設置する方法をおすすめします。
Q，自宅でテレワークを快適に行うためのコツを教えてください。
A，寝巻から着替えたり、デスク等の作業場所をしっかり確保しましょう。日常生活と仕事を混在させないように、時間のメリハリを作りましょう。
Q，作業場所を確保するためのリノベーション場所はどこがおすすめですか。
A，リビングの一角や、部屋と部屋の間にあるちょっとしたスペースでも、リノベーションで立派な作業場所にすることができます。
［注2］日経BizGate/「収束後もテレワーク中心に働きたい」4割 現状はストレスも
